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基礎用語から医療関連用語まで日常の看護場面で出会う事例を通して解説!
97年11月臨時増刊号
定価:1,300円 (税込)
第1章
心理的メカニズムに関する用語

●心のしくみ
 その1 その2 その3
●心の発達心理
 その1 その2 その3
●妊娠と出産をめぐる心理
 その1 その2 その3
●アイデンティティ

 その1 その2 
●ナルシシズム

 その1 その2
●対象喪失と障害受容

 その1 その2 その3
●老人の心理

 その1 その2

第2章
心理療法的アプローチに関する用語

●治療関係

 その1 その2 その3
 その4 その5 その6
●治療構造

 その1 その2 その3
●治療的介入
 その1 その2 その3
●関係の終結
 その1 その2 その3
 その4
●心理教育
 その1 その2
●ストレスとコーピング
 その1 その2 その3

第3章
家族・集団心理に関する用語

●家族の心理
 その1 その2 その3
 その4  
心理学用語
 
境界/世代間境界【boundaries/generation boundaries】
定義
 境界とは、二つあるいはそれ以上のシステムやサブシステムを区切るための抽象的概念。
 家族全体を一つのシステムととらえると、それは両親、夫婦、子どもなどのサブシステムから構成されている。一方で、家族は、両親の家族をも含めた拡大家族、近隣、村、国家などのスプラシステムの一部でもある。 このそれぞれのシステムの境目に境界は存在する。世代と世代の間、たとえば親世代と子ども世代というような、世代間の境界を特に世代間境界という。
 
  境目があることは直感的にわかりますが、これはあくまで心理的なもので、目に見えるものではありません。「家の敷居が高い」と表現しますが、目に見えない心理的な境界を、目に見える敷居の高さにたとえてわかりやすく表現しているいい例といえるでしょう。
 境界は、程度によってあいまいな境界、明瞭な境界、硬い境界などと区別されることがあります。両親と子どもとの境界があいまいな場合、夫婦げんかは常に子どもたちを巻き込み、時には両親のどちらかは子どもを味方につけるために、境界を越えて自分に引き込もうとするかもしれません。
 このように境界があいまいな家庭では、家族関係とそれぞれの役割は絡み合った状態になりやすいのです。また、境界が硬い場合は、子どもは両親から遊離しているといい、このように境界が硬い家族を遊離家族と呼びます。
 

Case study
 21歳の女性であるBさん(IP)は、過食症の患者さんでした。
 Bさんは2歳下の妹との2人姉妹で、父親は、早くに自分の両親を亡くした経験をもち、仕事がら海外出張が多く家庭には不在がちでした。母親は父親の不在の間家族のすべてを切り盛りしており、 通常は社会にうまく適応していましたが、自分が責められるような状況では、容易に混乱してしまう傾向がありました。
 妹は、幼少時より身体的な疾患をもち、母親と接する機会も多く、母親にとってはとてもよい子として育ちました。
 一方、IPは扱いづらい子として、母親に認知されていました。家に娘2人と母親の3人でいるときには、妹と母親は「ツーといえばカーと答えるというほどよくわかる」ため、仲よく話していましたが、 IPは一人自分の部屋にこもっていることが多かったそうです。
 この家族の境界について検討してみましょう。まず、父親は不在がちで母親と子ども2人からの境界は硬い境界です。
 残りの3人をみてみると、IPが一人遊離気味で、母親と妹の境界はあいまいになっています。
 健康な家族では、世代間には明瞭な境界があるといわれています。この家族では、母親と妹との境界があいまいなことから、世代間境界が不明瞭になっているといえます。
 過食症によってIPが入院した後、妹がIPを見舞ううちに姉妹の結びつきが強まり、しだいに妹は母親に不満をぶつけるようになりました。そして、ついに妹は母親に反抗するようになり、 家に帰りたがらなくなっていきました。
 これは、IPの入院によって家族の中の境界に変化が生じ、世代間境界が鮮明になりつつあるためと理解できるでしょう。


 ここでは、家族をとらえるときは、日々使い慣れた直線的な因果関係の考え方ではなく、循環的な考え方が必要なことをまず指摘しました。
 続いてシステム論的な考え方とは何か、家族システムの中で患者さんをどのようにとらえたらいいのか、境界という一つの見方が、システムの動きをとらえるうえで参考になることなどを説明しました。 次節では、もう少し具体的に実際の家族の中で起きることや、治療介入に関する用語について説明します。

 
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