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» 患者理解のための心理学用語
基礎用語から医療関連用語まで日常の看護場面で出会う事例を通して解説!
97年11月臨時増刊号
定価:1,300円 (税込)
第1章
心理的メカニズムに関する用語
●心のしくみ
その1
その2
その3
●心の発達心理
その1
その2
その3
●妊娠と出産をめぐる心理
その1
その2
その3
●アイデンティティ
その1
その2
●ナルシシズム
その1
その2
●対象喪失と障害受容
その1
その2
その3
●老人の心理
その1
その2
第2章
心理療法的アプローチに関する用語
●治療関係
その1
その2
その3
その4
その5
その6
●治療構造
その1
その2
その3
●治療的介入
その1
その2
その3
●関係の終結
その1
その2
その3
その4
●心理教育
その1
その2
●ストレスとコーピング
その1
その2
その3
第3章
家族・集団心理に関する用語
●家族の心理
その1
その2
その3
その4
vol.01
vol.02
vol.03
23歳の男性のBさんは視線恐怖症のため、高校のころから友達とも視線を合わせることができず、外に出るのも大変なほどでした。大学に入学後、自分から希望して、毎週1回精神療法を受けに来ていたのです。
Bさんは、面接の初期には、精神分析の理論を勉強してきたと言っては本の内容を説明したり、非常に概念的な哲学の話を長々としたりするばかりでした。 その様子は、自分自身の心の悩みなどまるで忘れてしまったかのようでした。
そこで治療者は、Bさんの中で抵抗が起きていることに気づいてもらうために直面化を行いました。「いつもここに来て、哲学の話をされたり、難しい話をされていますね」。するとBさんは「これがいつもの私のパターンなんですよね。わけのわからない話をして煙に巻いてしまおうとするんです」と話しました。治療者が「私のことも煙に巻いてしまいたかったんですね」とさらに直面化を深めると、Bさんは「そうなんです。話を聞いてもらいたくてここに通い始めたんですが、 自分自身の心の中を話そうとすると弱みを見られるようで、どうしても話せなくなってしまうんです」と言い黙ってしまいました。その後、それまでのような難しい話はほとんど聞かれなくなりました。
この対話の中で、治療に対する抵抗を直面化によって解釈できたのです。さらにこのとき、治療者に向けられた転移が見えつつありましたが、Bさんにとってはまだ、無意識のレベルにとどまり、まったく意識されていませんでした。その後、数カ月してこの転移が2番目の抵抗となりました。
ある日の面接で、以前のように煙に巻くような話し方が突然でてきました。そのことを治療者が指摘するとBさんはしばらく黙っていましたが、 おもむろに「この前の面接のとき、少し早く来て椅子に座っていたら先生がほかの男の患者さんと廊下で楽しそうに話をしていたんです。でも、私との面接のときにはあんなに楽しそうに話されることはないなと思って……」と話しました。つまり、私とBさんの関係より、その廊下で話していた患者さんとの関係のほうがよさそうな気がしたと言っているのです。
わかりやすくするために、Bさんの家族状況を説明します。Bさんの家族は会社を経営する厳しい父親と母親と兄の4人家族でした。Bさんの父親は非常に厳しい人で、Bさんが泣きごとを言うと叱りつけ、優秀なお兄さんと常に比較したそうです。
まず治療者は、廊下で話している私を見てどんなことを思い出したのか尋ねました。これは、転移と抵抗の解釈につながる直面化です。Bさんは、その質問には答えず、自分の父親との関係を話し始めました。「父はいつも成績のいい兄と自分を比べていた。自分がいい成績を取っても『お兄ちゃんにはまだ追いつかないな』と言われるばかりだった。だから、自分に自信がもてない」という話をしました。
そこで治療者は「廊下で私を見たときにお父さんとあなたの関係を思い出したのかもしれませんね。そして、面接の中で、お父さんに対する感情と同じような感情を私に向けたくないと感じていたのでしょうね。だから、以前のような煙に巻くような話をしてしまったのでしょうね」と伝えました。
これが、直面化から導かれる転移の解釈です。このとき、Bさんはこの解釈を否定しました。しかし、その次の面接では、あたかも父親に文句を言うかのように、 治療者に対して不満をぶつけているBさんがいました。つまり、転移を解釈したことでBさんが父親に言いたくても言えなかったことを、治療者を父親に見立てて言えるようになったわけです。
このようにして精神療法は明確化、直面化、解釈を繰り返し、無意識の葛藤を意識に蘇らせながら進んでいくのです。
「治療的介入」として、おおまかな治療の理論と技法を説明しました。チーム医療が進歩しつつあり、看護者の役割も徐々に変化してきています。今後、精神療法の知識が必ず看護者に求められる時代になると思われます。そして、このような知識と技術を少しでも患者さんの役に立てていただければと思います。
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