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基礎用語から医療関連用語まで日常の看護場面で出会う事例を通して解説!
97年11月臨時増刊号
定価:1,300円 (税込)
第1章
心理的メカニズムに関する用語

●心のしくみ
 その1 その2 その3
●心の発達心理
 その1 その2 その3
●妊娠と出産をめぐる心理
 その1 その2 その3
●アイデンティティ

 その1 その2 
●ナルシシズム

 その1 その2
●対象喪失と障害受容

 その1 その2 その3
●老人の心理

 その1 その2

第2章
心理療法的アプローチに関する用語

●治療関係

 その1 その2 その3
 その4 その5 その6
●治療構造

 その1 その2 その3
●治療的介入
 その1 その2 その3
●関係の終結
 その1 その2 その3
 その4
●心理教育
 その1 その2
●ストレスとコーピング
 その1 その2 その3

第3章
家族・集団心理に関する用語

●家族の心理
 その1 その2 その3
 その4  
心理学用語
vol.01 vol.02 vol.03
 
 それでは、次に具体的な面接場面の事例で説明してみましょう。
 
Case study
 16歳のA子さんは高校入学後、気持ちの悪さが続き、いくつかの病院で検査を受け、精神安定剤などを処方されていました。しかし、症状がおさまらないということで母親と来院しました。
 A子さんの症状は高校に入る前後から出現していました。内科で調べてもらっても原因がみつからないので、精神的なことからきている症状だと思っていたそうです。しかし、精神安定剤を飲んでも良くならないので、どうしたらいいのだろうと途方にくれているとのことでした。
 この情報だけでは、よくわからないので質問をしました。「高校に通うことが苦痛なわけでもないんですね」。それに対してA子さんは、成績もよく、友達も多く、学校は楽しいと答え、特に学校でのことに不満があるようでもありませんでした。
 さらに家庭でのことを尋ねてみても、特に心当たりはないとA子さんは答えました。同席していた母親は、それまで何も話さずにA子さんと治療者とのやりとりをじっと聞いています。そのことがやや気になったため、今度は母親に、何か原因について思い当たることは?と尋ねてみましたが、 母親も特に思い当たることはないと重苦しく答え、黙ってしまいました。
 ここまでの面接で、治療者は明確化を行っていますが、ほとんど何も明らかにはなっていません。治療者は原因が何かを明らかにするために、今度は家族のことを話してもらうことにしました。するとA子さんは、母親の表情を気にしました。やがて、母親が意を決したように、父親とは以前から夫婦関係がうまくいかず、昨年から別居していることを話し始めたのです。 そして、そうなってしまったのは夫に責任があるのだと話し、A子さんとは視線を合わせようとしませんでした。
 この仕草から治療者は、母親とA子さんとの間の緊張関係に気がつきました。母親はA子さんに対する罪悪感と自分自身の傷つきを必死に防衛しているのでしょう。そしてA子さんはそのような両親に対して、怒りと同情の気持ちをもっているが抑圧してしまっているのではないでしょうか。
 そこで、どちらへともなく「お父さんがいなくなっちゃって、大変だったんですね。腹もたつだろうし、心細さもあるでしょうね」と明確化と直面化を行いました。すると、母親がほっとした表情になり、「この子の症状にやはり関係してるんでしょうか。私は前から関係あるのかなとずっと気になっていて……。別居したすぐ後から、この症状が出てきてますから」と次々と話し始めました。
 次に、A子さんに明確化と直面化を行いました。「お母さんはA子さんの症状と別居のことが関係してるんじゃないかって感じているみたいだけど、A子さんは関係してると思いますか」と治療者が尋ねました。すると、A子さんはしばらく考えて、「どうかな。よくわからないけど」と答え、 「でも、前からお父さんとお母さんがけんかしていると嫌だった」と話し、黙ってしまいました。
 さらに治療者は「ご両親がけんかしているのが嫌だったんですね」と明確化すると、A子さんは「私がいるからけんかになっているんじゃないかと思って……」と 両親が仲が悪くなったのは自分のせいではないかという傷つきと罪悪感を話しました。すると母親が「そんなに気にしていたんですね」とA子さんの顔を見ながらぽつんと言ったのです。

 このケースは、数回の外来受診を経て症状が完全に消失しました。それまで母娘の間ではもちだせなかった話題について鬱積した気持ちを吐露できたことは、 症状の消失に大きく影響したようです。このように、心のわだかまりを吐き出す作業のことをフロイトは「煙突掃除」と呼んでいます。
 この面接は初回面接なので、意識されているレベルでの、明確化、直面化までは行っていますが、解釈まではたどり着いていません。しかし、面接の流れの中で、どのようにして明確化や直面化が使われるか、わかりやすい事例だったのではないかと思います。
 次のケースでは解釈ということを実際の面接場面から説明します。
 
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